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人と人とを紡いでいく

町家料理教室 キッチンみのり

堀川三条と千本三条との間を東西につなぐ「三条会商店街」は大正4年に発足した歴史ある商店街で、西日本最大級の全長800mにも及ぶアーケードの中には、老舗の商店から若者向けのカフェや雑貨屋、神社に至るまで軒を連ねています。

そんな、近隣住民にとっても観光客にとってもなくてはならない存在である三条会商店街のほど近く、大宮通りを北に向かってすぐに可愛らしい看板が目印の料理教室があります。

旬の地場野菜や新鮮な魚、乾物を使って家庭料理や保存食作りを提案している料理教室「キッチンみのり」を、今回はご紹介したいと思います。



築90年の町家をリノベーション。








お話をお伺いしたのは、「キッチンみのり」の代表である山上公実さん。
実家は、三条会商店街の中にある「ダイシン食料品店」という鮮魚や純乾物を取り扱う老舗食料品店。女将さんであったお母様も仕事柄料理上手で、テレビの料理番組を見ては一緒にキッチンに立ち、その料理を再現してみるのが親子のコミュニケーションでした。
そんな環境で育った山上さんは、大学卒業後商社に就職。当時は食に関わる仕事をするとは全く思っていませんでしたが、様々な経験をする中で「料理が好き」という想いに導かれて、その道に進んでいくこととなります。

30代のはじめ、豆専門店の依頼で「豆と魚のレシピ」を一年間手がけ、それを見たオーナーからの誘いで飲食店で働きだします。
約7年の飲食店勤務の期間に、昔母親と一緒に料理を作ることで味わった、料理を通じて人とつながる感覚や自分が作ったものを囲んで生まれる人々の笑顔を思い出していくのです。そして、それが「やっぱり自分は料理が好きなんだ」「好きなことをしながら生きていきたい」という想いをより一層強めていくものとなりました。

決め手は、両親の所有する町家を預かることになったこと。
ちょうどその頃務めていた飲食店が事情によって閉店することになったこともあって、思い切って料理教室をオープンすることを決めました。
大きな梁や床の間、坪庭といった町家の魅力ある部分は最大限に残し、一部をリノベーションすることで料理教室に対応できる空間を作り上げたのです。






細長いスペースと天井の高さは、町家の台所ならでは。天井から光が差し込んで、とっても明るいのも特徴!心地よい太陽の光を体に浴びながら料理を作るのも素敵ですよね。たくさん煮炊きしても匂いがこもることもありません。昔の人の知恵ってすごいですね。ちゃんと生活に寄り添った造りになっているのです。




酒屋をしていた母の実家から譲り受けた醸造元の看板。褪せた色から歴史を感じます。






土間を抜けると梅の木が綺麗なお庭を眺めることができます。ここには山椒の木や様々なハーブなどが植えられており、みんなで収穫してお料理に使われます。採れたての食材を味わうことができるのも魅力ですよね。



「料理」だけでもなく、「食品」だけでもない。






キッチンみのりでは、料理の作り方だけでなく味噌や梅干しといった発酵食品や保存食の作り方を教えるワークショップもあれば、使い方に困る乾物の活用方法を教える「乾物クッキング」、鰹節削り器を自分で作ってみるという職人さんとのコラボ企画まで、バラエティーに富んだ魅力的な講座が数多く開催されています。
時には、みりん・酒・酢の蔵元巡りのために生徒さんと一緒に遠征することもあります。

「自分がいいと思うものをみんなにも知って欲しい」
これも、山上さんが大切にしたいつながりのひとつなんです。

料理教室をしていると、使っている塩や醤油といった調味料や使用する素材、使う道具に興味を持たれる方もたくさんいらっしゃいます。そんな方に、自分が素晴らしいと思う職人さんの道具を紹介したり、オススメの生産者さんを紹介することで、そこに新たなつながりが生まれ、紹介先の貢献につながる。

いいと思うものは残したい。
教室として活用することを決めたこの町家も、近年では維持が難しく取り壊すところも多くあります。維持継続するためには、利用者や残そうとする人たちがいないと始まりません。
残したいものがある山上さんだからこそ、キッチンみのりを通じて自分の好きなものを伝えていくことが喜びとなっているのです。




昔は、実はどこの家庭にもあった鰹節削り器。国産杉をキット化したものを職人である岩出信彦さんが持参して行われますので、誰でも簡単に作成できます。お子様連れで参加される方も多く、自家製鰹節削り器で削った鰹節の香りの良さと美味しさにハマり、鰹節かけご飯が大好物になってしまった子供が続出したのだとか・・・!



長崎県五島列島の「桶光」の木桶職人である宮崎光一さんの作品である木桶。味噌の貯蔵に最適なんです!講師として宮崎さんをお招きし、木桶の魅力や構造・仕組みの講義と、参加者さん自ら木枠をはめる体験をするワークショップも開催されました。



「家で再現できる」がモットー。






山上さんが料理教室を開催する上で大切にしていることのひとつに、「家で再現できるかどうか」があります。

せっかく美味しい料理の作り方を教わっても、家で再現できないのであれば意味がありません。ですので、例えば使用する食材や調味料もガチガチに固めたりはしません。「これは、もしなかったら〇〇でも代用可能です。」とか、「あくまでも調味料の分量は目安なので、味を見ながら好みの味に量を調整して下さい。」「素材の美味しさを損なわないようにこうすると良いですよ。」などなど。応用やアレンジの仕方もたくさん伝えます。

家に帰ってからも繰り返し作ることで、その料理は家庭の味となっていき、定着していきます。家にある材料や身近な食材を生かし、美味しくて体に良い料理を日々取り入れてほしい。
その家庭に根付く料理。それこそが理想の状態なのです。

参加者さんの後日談で、「あの料理、うちのヘビロテメニューになっています!」なんて声が多数あるのは、この所以からなのです。



人と人がつながり、紡いでいくもの。




山上さんは、実家が商店街の中にあったことから、人とのつながりを日常的なものに感じていました。学校が終わったら、近所の商店に顔を出してから家に帰る。

「私は商店街に育てられたようなもんなんです」
山上さんは言います。

なので、教室を訪れた方と一緒に商店街の商店を紹介して回ることもしばしば。「お漬物はここが美味しいですよ。」「試食後のスイーツを買いに、あそこのお店まで一緒に行きましょうか。」などなど。
自分の知っている情報を出し惜しみなんてしません。

そんなスタイルだから、参加者さんたちにも自然とつながりが生まれ、キッチンみのりを離れた場でも、交流が生まれることも多々あるそうです。




キッチンみのりには、たくさんの外国人観光客の方も来られます。オープンしたての頃に参加してくれたイスラエル人のお客様が大変喜んでくれて、母国の有名なブログにキッチンみのりで体験し習得した日本料理が素晴らしかった!という内容をアップしてくれたおかげで、連日イスラエル人のお客様で満席になったこともあるのだとか。



喜びの連鎖をこれからも。




山上さんに今後の展望を聞いてみました。
「たいした宣伝もしないまま、こんなにたくさんの方が継続的に訪れるようになってくれたことを、とっても嬉しく思っています。また、自分が好きだな、素晴らしいな、と思ったものを紹介することで伝統的な技術等が受け継いでいかれることも嬉しい!自分自身も親から受け継いだこの町家を守りながら、人と人や人と技術がつながり、喜びの連鎖が生まれる場所にこれからもしていきたい。この「キッチンみのり」がたくさんの架け橋になれたら、と思っています。」

そう語る山上さんの顔は優しく、とっても温かい笑顔がこぼれていました。
きっと、この温もりに惹かれて、たくさんの人が訪れる場所になったんでしょうね。





いかがでしたか?
料理教室に通ったけど、家で自分だけで作るのが難しい・・・。そんな経験のある方、キッチンみのりを訪れてみるのもいいかもしれませんよ♪

<キッチンみのり>
〒604-8326
京都市中京区大宮通三条上ル姉大宮町東側102

http://kitchen-minori.com/

◎教室は不定期開催となりますので、Facebookにて最新情報をご確認ください。
Facebook「キッチンみのり」はこちら



 

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