小学校高学年になったら、通わせるかどうかを検討する家庭が多いと言われている学習塾。
「学校の成績が良くない」「中学受験を考えている」「学習習慣を身につけるため」検討の理由は様々ですが、何を身につけてもらいたいのかによって選ぶ学習塾も変わってきますよね。
今回は、「学習塾」というこれまでの既成概念にとらわれず、「寺子屋」のような学習塾を目指して開校された、京都の「あずさ塾」をご紹介したいと思います。
子供たちが「楽しく生き生きとした表情で勉強ができる場」を目指して。
あずさ塾は、京町屋を利用して「寺子屋」さながらのロケーションで運営されている個別指導塾です。
現在は、京都市右京区と中京区にそれぞれ「梅津教室」と「御所南教室」の2校が開校されています。
お話を伺ったのは、あずさ塾代表の飛田梓さん。
飛田さんが学習塾に携わるきっかけとなったのは、大学生の頃父親が立ち上げたフランチャイズ塾にアルバイト講師として勤務し始めたことでした。
その頃は、まだ自身で学習塾を立ち上げるなんて夢にも思っていませんでしたが、就職活動の際にたまたま参加した「京都起業家養成塾」で様々な年代の方が起業を目指し、それぞれに独自のビジネスプランを検討されている姿に刺激を受け、「起業」を意識するようになります。
始まりは、公民館の会議室を一室だけ借りての小さなスタートでした。
ちょうどその頃、京都の洛北中学校と西京中学校が中高一貫の附属中学校となったため、その2校への合格を目指す中学受験コースを専門に扱う個別指導塾としての位置づけでした。
子供たちが「楽しく生き生きとした表情で勉強ができる場」を目指して始めた個別指導塾は、合格者を輩出したことをきっかけに、徐々に生徒数を伸ばしていくこととなります。
江戸時代の高い識字率を支えた「寺子屋」。
寺子屋とは、江戸時代に普及した子供たちに読み書きやそろばんを教える庶民の教育機関のことを言います。
幕府や藩の介入等を受けずに独立運営されており、就学年齢の決まりはなく約9歳〜18歳くらいまでの子供がフリースクールのように一同に勉学に励む場となっていました。
全盛期には全国で15000校以上が存在し、江戸時代の人々の高い識字率を支えていたと言われています。
あずさ塾では、この寺子屋のように学年ごとにクラスを区切ることなく、フリースタイルでの教育プログラムを提供しています。
生徒数が増えてきたことで間貸しの教室ではなく自身の教室をオープンさせることを決めた飛田さんは、貸しに出されていた町家を見てピンときたと言います。
自分の目指す教育方針と寺子屋の在り方に合致点が多かったこともあり、町屋で寺子屋のような学習塾を運営することとなるのです。
生徒が主体的に勉強に取り組むためには。
学習塾での目標はもちろん、学校での成績を上げたり志望校への合格といった目に見える結果です。
しかし、そこに行き着くためには勉強手法や知識といった実質の「勉強」だけでは足りない、と飛田さんは考えています。
アルバイトで塾の講師をしていた際、「じゃあ、まずはこの問題を解いてみて。」「次はこのプリントをみんなでやってみましょう!」と講師主導の教育をしていく中で感じた疑問があります。
「講師が勉強の進め方や内容を決めてしまうことで、生徒の主体性を奪っているのではないだろうか・・・?」
実際、その時の生徒は指示待ちになってしまい、講師から次にどんな勉強をするのか提示があるまで待ちの姿勢でいることが多かったのです。
学校や学習塾に通っているとはいえ、一日中張り付いて勉強を教えているわけではありません。大半は自分自身で行う自習の時間だと考えると、自分一人でも主体的に勉強に取り組むという学習姿勢を身につけていないことには、飛躍的に成績が上がる、なんていうことはないのです。
生徒の自立・自習が目標。
飛田さんが考える「学習姿勢」とは、普段の生活習慣からくるものに他なりません。
例えば、きちんと挨拶をするとか部屋に上がるときは靴を揃えるとか、忘れ物をしないとか。
「えっ?!そんなことが?!」とも思える普段の姿勢が、勉強に向き合う姿勢とイコールになっていくのです。
挨拶や返事は集中力を高めることにつながりますし、整理整頓や規律を守るということは他者を意識する精神につながり、自立心を育むことにつながります。
そういった基本的なことを身につけながら実質的な勉強にも取り組むことで、学校や塾以外の場でも生徒が自発的に勉強に取り組む姿勢が身につくのだそうです。
実際、私が取材をさせていただいた際も、生徒が「お前は〜」と発した言葉に敏感に反応し、「人に対して「お前」と言ってはダメでしょ!」と諭す場面がありました。勉強だけじゃない、生徒の心の成長もあずさ塾では大切にしているのですね。
一人一人の個性を見極め、寄り添う。
あずさ塾では、講師が学習プランを組み立てることはしません。目標を設定し、そこに行き着くためのスケジュールや勉強内容を決めるのは生徒自身です。
例えば、〇〇中学合格を目指そう!となった場合、どの分野のどの範囲をどれだけ時間をかけて習得するのかや、いつまでに何点を目指す、といったスケジュールは生徒自身が立て、そのPDCAを自身で回していきます。
もちろん、計画の修正や改善はサポートしますが、自分自身で立てたプランを自分の力で実行していくことが重要なのです。
講師の大切な役割は、生徒自身がPDCAを回していく中で個人の個性に合わせたサポートをしていくこと。何回も同じところを間違えることで嫌になってしまう子には、問題を解けたことよりも、間違えても何回も何回も消しゴムで答えを消しながら解き直し、ようやく正解にたどり着いたことを褒めてあげます。
どこを評価してもらうことがやる気につながるのかは、生徒一人ひとり違います。その個性を見極め、個人に寄り添ったフォローをしていくことも講師の大切な役割のひとつなのです。
あずさ塾では、学年ごとにクラスを区切ることはありません。様々な年代の生徒が一緒に勉強することで、自然と上級生が下級生にわからないところを教える、という構図ができていきます。最近では一人っ子の家庭も多いので、こういった自分より上の年代のお兄さんお姉さんに教えてもらい、その分自分が大きくなったら、今度は弟や妹たちの面倒を見るという環境をここで持つことで、人との接し方や距離感を掴む学びになって欲しいと願っています。
生徒が自立してくると、質問の内容が変わってくるそうです。「この問題がわかりません。」という丸投げな質問から、「ここまではわかるけど、その後の式の意味が分かりません。」と、自分で自分の状況を把握し、説明ができるようになってくるのだとか。
勉強部屋の裏には、町屋らしい細長いキッチンが。夜の授業の際には、こちらで簡単な軽食を作ってお出しすることもあります。塾から帰ってきたらお風呂に入って寝るだけ・・・ご家庭の負担も軽減されて、ありがたいサービスですよね!
あずさ塾の今後の目標
飛田さんに今後の目標を聞いてみました。
二つあって、一つ目は「働く女性のサポート」。
自分自身も共働きで子供を育てながら学習塾を運営することで、たくさん苦労をしてきました。なので、同じような境遇で頑張っている女性のサポートをしたいとのこと。
学童保育のように学校が終わってからの時間を塾で預かり、勉強だけでなく工作やお菓子作り等も含めの実体験学習を行っていきたいと考えています。
そして、もう一つが幼児教育。
経験上、学習姿勢を身につけるためには幼児の頃から地頭力を鍛えることが必要と感じることが多いため、就学前から基盤造りを行う幼児教育にも力を入れていきたいとのこと。
地頭は、偏差値や成績といった再現を覚えることで身につく学力と、考える力や粘り強さ、発想力といった目に見えない力が合わさることで鍛えられていきます。
自身も小学2年生、3歳、1歳の子を持つ親として、現在3歳と1歳の子供の地頭育成に取り組んでいるのだとか。
これらのサービスは、今現在一部をスタートさせて取り組み始めているそうです。
子供の数だけ未来がある。教え子たちが将来どう羽ばたいていくのか、今から楽しみで仕方がないですね。
いかがでしたか?
子供に身につけてもらいたいものは、学力だけではないですもんね。現代は人と人とのつながりが希薄になりがちなことで、昔は自然と身につけることができた社会性等が普段の生活の中で得難くなってきているかもしれません。
一昔前にタイムスリップして、寺子屋の要素を取り入れてみてはいかがでしょうか?
<あずさ塾〜京町家の寺子屋のような学習塾〜>
TEL・FAX:075-882-6725
◆御所南教室
〒604-0906
京都市中京区東椹木町110
◆梅津教室
〒615-0915
京都市右京区梅津南町53-3