ワインの産地と言えばフランスやイタリア、スペイン、チリなどをイメージする方が多いと思いますが、実は日本でもたくさんの「日本ワイン」が存在することをご存じでしょうか?
ワイン用語では料理とワインとの組み合わせや相性を結婚に例えて、「マリアージュ」という言葉が用いられています。そんな言葉があるくらい、料理との相性を重んじられて飲まれているものなんですね。
ということは、私たちが普段口にしている「和食」とのマリアージュを考えた場合、やはり「日本ワイン」がしっくりくる・・・ということなんでしょうか?
今回は京都初のワイナリーである「丹波ワイン」さんにお話を伺いながら、「日本ワイン」の魅力をご紹介していきたいと思います。
「和食」に合う日本ワイン。
丹波ワインは、1979年に当時「クロイ電機株式会社」という照明機器会社の社長を務めていた故黒井哲夫さんが創業しました。出張で訪れた欧米で味わったワインの美味しさに感動し、たくさんお土産を買って帰ったもののいざ自宅で和食に合わせて飲んでみると、欧米で感じた感動が蘇ることはなく全く別のモノに感じてしまったのがきっかけでした。
ワインは美味しい飲み物だけど、今流通しているものはイタリアンやフレンチといった味の濃い料理に合わせて楽しめるようにしっかりした味わいのワインが多い。一方、日本人には「出汁」の文化があり、その繊細な味を生かして相乗し合えるワインが外国にあるはずがない・・・。
だったら自分自身で和食や地元の京料理に合うワインを造ってしまおう!
照明機器会社という全く畑違いの会社がワイナリーを始めるという展開に、当時の社員さんたちからは大反対されたそうです。しかし、その反対を押し切り私財を投げうってまで「和食に合うワイン」をテーマとしたワイン造りを目指していくこととなるのです。
今では6ha(ヘクタール)もの広大なブドウ農園で約50種類ものブドウが栽培されており、世界的食品コンテスト「モンドセレクション」において1983年以降6年連続の金賞受賞を果たしている他、酸化防止剤を一切使用せずに生詰めで作られた「てぐみ」等世界的にも評価の高いワインを数多く生み出しています。
今回は、丹波ワイン株式会社の取締役である黒井仁吉さんと醸造責任者である内貴麻里さん、エグゼクティブマネージャーでありソムリエの資格も持つ坂本泰隆さんの3名にお話をお伺いしました。
「食の宝庫」丹波が生み出す上質なワイン。
丹波という土地は、古くからお米や丹波栗、大納言小豆など豊富な食材を産出し、「食の宝庫」として京の都を支えてきました。その良質な土壌や夏と冬の温度差がもたらす気候に加え、1日の気温の日較差が激しい特徴はワイン造りに適していました。
良質なブドウを栽培するためには、十分な日照時間と夜間の涼しい気温が必要と言われています。昼間に日光を浴びることで高い糖度を蓄えますが、夜の気温も高いと高温障害と呼ばれるぶどうの生体内の機能障害がでて生育が停止したり、果実の成熟が遅れてしまうことがあるため、夜は涼しくなるのがベストなんです。山梨や長野といった寒暖差の激しい土地がブドウの産地として有名なのはそのためで、丹波はその特徴を京都という場所で再現することが可能だった稀有な存在だったのです。
産地ではなかったからこその試行錯誤。
そもそも、冒頭から「日本ワイン」と記載しておりますが、「国産ワイン」と「日本ワイン」は違うということをご存じでしょうか?「日本ワイン」とは、日本で栽培・収穫されたブドウのみを使って国内で醸造されたものを言います。一方、「国産ワイン」とは「国内製造ワイン」を指しますので、海外から輸入した濃縮果汁やブドウを使って国内で醸造したものになります。
丹波ワインで扱っている商品は約7割が「日本ワイン」で構成されており、自社農園で栽培したものと契約農家から仕入れたブドウで醸造したものとで作られています。
今でこそ自社農園を持つワイナリー数は日本全国で約300軒ほどに及びますが、創業当時はパイオニア的存在かつ京都では初のワイナリーでした。当然、京都・丹波という土地でどんな品種のブドウが栽培できるのか等の知識はありません。
まずは日本と気候や土壌の近いドイツで栽培している品種からスタートし、今では50種類ほどの品種を試験的に栽培しています。この中で商品化されているのは12品種ほど。創業から41年たった今でも、他の40品種ほどはまだ試験中だというのですから、その奥の深さと商品化までの道のりの遠さに驚かされます。
醸造責任者である内貴さん曰く、和食に合うワインにするため”丸みを帯びたワイン”を造るように心がけているそう。初期段階では尖った珍しいワインを造っていたこともあったのですが、近年ワインは特別な日に飲むものに限らず、日常的に口にする習慣が日本でも定着しています。日々カジュアルに飲むワインを考え、微妙な味わいの多い京料理などの和食に合わせるためにも、無駄なものを極力削ぎ落した自然に近く雑味の少ないワインを造ることを目指されているのだとか。
8月はブドウの収穫シーズン。たわわに実ったブドウ畑は圧巻です!
取材に伺った日はちょうどデラウェア種の新酒の仕込みが行われる日でしたので、ワイン製造過程もたっぷり拝見してきました。
まずは大量のブドウ(デラウェア)をローラーに乗せて、軸を取って実だけが残るようにします。
次は「圧搾」という過程。機械の中にブドウを入れて大きな風船を膨らませることで、実を潰して果汁を絞り出します。
今回は白ワインの仕込みのため、ここで果皮や種子が取り除かれます。
※赤やロゼワインの場合は、果汁・果皮・種子のすべてを次の過程である発酵へと進めます。発酵過程によって、果皮から赤ワインの特徴である色素やタンニンが果汁に移っていくからです。
取り除かれた果皮や種子は排出されます。
圧搾が終われば、次は発酵です。現在ではステンレス製のタンクで発酵するのが主流ですが、丹波ワインでは日本酒で使用していた酒蔵(琺瑯製)のタンクも併用しています。創業当初、タンクも何もなかった時に近くにあった日本酒蔵でタンクを借りていたものを、そのまま引き継いだのだとか。酒蔵の長年住み着いた麹や酵母もワインに影響を与えてくれ、和食に合うワインへと成長していったのかもしれません。
発酵の次はろ過に進みます。こちらは、「ろ布(ろふ)ろ過機」というもの。ワインを布に染み込ませてからポタポタ落とすことで、不純物を取り除くことができます。
他にも甘口ワインを造るために酵母をろ過して発酵を防ぐろ過方法等、たくさんのろ過方法があり、ワインのブランドや種類によって何通りも使い分けます。
こちらは樽庫。20℃以下で熟成させます。どれも同じに見えますが、実はどれも違っているのです。樽の素材はオーク材が主ですが、ブドウの品種によって相性の良いオーク材の産地等があるのです。その相性も、何十年とかけて研究して違いを見極めていきます。また、樽は内側を焼いて使用するのですが、このロースト具合によってもワインの風味に違いが生まれてくるのです。
※写真の「M」という文字はロースト具合の表示なのです。
貯蔵庫には何万本ものワインが・・・!瓶詰したまま熟成させているものもあり、2.3年かけて味を落ち着かせていきます。
ワイナリー併設のレストラン兼ショップでは、ぶどう畑を一望しながら地元食材に合ったワインを楽しむことができます。
※現在レストランはお休みですが、ショップでは試飲も可能。10月までぶどう畑を真横にBBQが楽しめます。(要予約)
世界に認められるワインを京都から。
日本ワインは、世界から見ればまだまだ新参者ですが、徐々に世界でも注目を集めるようになってきました。
世界中で日本食が高い評価を受けると同時に、それに合うワインも必要だということなんでしょう。
日本は高温多湿な環境のため、「ワイン造りには向かない」とされてきました。
しかし、何十年にも渡る研究と栽培技術の向上・経験により自信を持って提供できるワインを少しずつ増やしていくことができました。
そもそも産地じゃない京都で始めるとなったために、他のワイナリーよりも様々な品種にチャレンジする土壌が根底にあったことは、今となってはラッキーだったのかもしれません。だからこそ、より「和食に合うワイン」への探求心が強まり、日本では難しいとされていたPinot noir (ピノ・ノワール) にも臆せずチャレンジし、今となっては一目置かれるブランドとなりました。
これからも現状に甘んじることなく、和食に合うワインを追い求めていく歩みを続けたい。そう3人は口を揃えて語ってくれました。
いかがでしたか?
丹波ワインはオンラインショップで購入することも可能ですので、是非一度チェックしてみてください♪
また、ワイナリー併設ショップでは限定ワインやオリジナル商品もあるので、良かったら訪れてみてください。
<丹波ワイン株式会社>
京都府船井郡京丹波町豊田鳥居野96
TEL:0771-82-2002
https://www.tambawine.co.jp/
※「ワイナリーツアー・ショップ・レストラン・BBQに関するお問い合わせ」は下記にお願いします。
<丹波ワインハウス>
京都府船井郡丹波波町豊田千原83
TEL:0771-82-2003
<オンラインショップ>
https://www.tambawine.com/