年に一度、野菜の「栄養価コンテスト」というものが開催されていることをご存じですか?
「農産物は栄養価が高い!」と言っても、栽培方法や使用する肥料等によってその値は様々。高いものもあれば低いものもあるのが現状です。
こちらのコンテストは、数種類の野菜を①糖度②抗酸化力③ビタミンC④硝酸イオン⑤食味の5つのポイントで評価をつけ、総合順位を競うものです。目的は国産農作物における栄養価レベルの底上げで、栽培方法と栄養価の因果関係を探求して情報交換をすることで、栄養価の高い農産物を安定的に作る栽培技術を探るために開催されています。
今回は、この「栄養価コンテスト」において大根部門の日本一を2度も受賞された経験をもつ、若き就農者であり「かみむら農園」のオーナーである上村慎二さんに野菜作りのこだわりや想いを伺ってきました。
人を感動させられる野菜作りを目指して。
京都府八幡市にあるかみむら農園の上村慎二さんは、農業を始めてから約10年と、農業の世界ではまだまだ若手の就農者です。
高校卒業後、板前やトラックの運転手等を経験した後自分自身で何かを生み出す仕事に就きたいと思うようになり、奥様の実家のある土地で農業をスタートすることとなりました。きっかけは、奥様の実家に帰った際にいただいた茄子の美味しさ。こんなに美味しい野菜を食べたのは初めてで、人を感動させられるくらいの美味しい野菜が作りたい!と思ったのだとか。
就農を決めた上村さんは京都府の就業支援センターに相談し、有機農業の第一人者であった上田義輝さんを紹介され弟子入りします。修業期間の1年強で有機農業のいろはを習い、それと同時に自身の農地開拓や野菜作りもスタートしていくのですが、始めは試行錯誤の連続。
3ヶ月かけて育てた作物が全滅し、その原因さえもわからない・・・というのはしょっちゅうでした。忙しい合間を縫って開拓した販売店さんにも「かみむら農園さんの野菜は葉っぱがボロボロやから売れへんわ」と言われて取引が長続きせず、安定供給できないことによって売り先は開拓しては途絶えて、の連続だったのです。
ようやく自分なりに納得のいく栽培方法が見つかり、安定しだしたのは農業を始めてから3年ほど経った後のこと。
元々5a(アール)だった農地は、今では80a(約8000㎡)にまで拡大し、農薬を使わずに栽培するのは難しいとされているオーガニックいちごを始めとした、大根、人参、おくら、洛いも等約8品目の野菜を有機JAS認定のオーガニック農法で栽培するまでに至りました。
植物性有機肥料へのこだわり。
同じオーガニック農法でも、その栽培手法は多岐に渡ります。
上村さんが最もこだわっているのは肥料で、比較的安く手に入れることが可能な上に良く育つとされる動物性の肥料は一切使いません。
使用するのは農園のある八幡市の名産品として知られる竹をパウダー状にしたものと、これまた地元の豆腐屋さんから仕入れたおからを自分の畑で米ぬかと合わせて発酵させたもの、これに香り高い圧搾油かす等を混ぜ合わせて作る植物性有機肥料のみです。
上村さん曰く、「野菜の味は、肥料の味」。
動物性の肥料は窒素の吸収量が多いため、硝酸(しょうさん)となって植物体内に残ります。この硝酸こそが野菜独特の「えぐみ」の原因で、糖度やビタミンC等の大事な栄養素を下げてしまう要因にもつながっています。
野菜の中でもえぐみが強いとされているほうれん草も、上村さんが育てると、高い時には糖度15度を超えるようなぶどうよりも甘いほうれん草が育つのです!えぐみによる苦さや渋みが子供の野菜嫌いにもつながっている可能性が高く、上村さんは子供も「美味しい!」と喜んでパクパク食べてしまう野菜作りを目指しているのです。
また、肥料の香りも野菜に移るという持論から、香り高い圧搾油かすや清々しさを感じる竹パウダーを肥料として用いてるのだとか。
美しいこの花は、オクラのお花。実はこの花も植物性肥料で育てると食べられるんです!半信半疑で食べてみましたが、味はしっかりオクラで、しかも甘い!料理屋さんからはこの花の仕入れ要望も多いそうで、飾りつけ兼食べられるお花として人気も高いそうです。
畑で発酵中のオカラ。米ぬかと合わせることで、3ヶ月かけて肥料にしていきます。これは1ヶ月ほど発酵したものなのでまだ黄色に近い色合いですが、3ヶ月経つと茶色く変化していきます。ここまでくると香りは味噌のようになり芳醇さを増します。
オーガニック栽培にこだわる理由。
上村さんには忘れられない経験があります。
それは、以前マルシェに出店した際に出会った方のこと。
その方は、真夏にも関わらず長袖長ズボン。全身黒づくめの上に帽子を被り完全防備のいでたちで上村さんのブースを訪れました。その異様な空気感に一瞬ぎょっとしたものの、よくよくお話を聞いてみると、実はその方は化学物質過敏症だったのです。化学物質過敏症とは、一旦発症するとその後極めて微量の化学物質に対しても過敏症状がでてしまう疾病のことで、化学肥料で育った農作物を食べることによって命の危機にさらされることもあるのです。
その方はどのように栽培されているのかをいくつか質問した後、上村さんの育てた野菜を購入してその場で食べました。しばらく経っても症状が出なかったことを確認し、「あなたの野菜は大丈夫なようです。」と仰って数種類の野菜を購入して帰られたそうです。
実は自身もアレルギーに苦しめられた過去を持つ上村さん。
農業を始めた時はトマトや茄子等、80品目ほどを栽培していました。しかし、度重なる体調不良や湿疹等を経験し数年経った頃、その原因が茄子科のアレルギーによるものだったことが判明するのです。
特にプチトマトはかみむら農園の主力になりつつある商材になっていましたが、命の危険を伴ってまで栽培を続けることはできず、泣く泣く品種の見直しを迫られることとなりました。
生きるために食べる農作物が、逆に食べることによって死につながることもある。その危機感を自身の体験とマルシェでの出会いによって痛感した上村さんは、そういった方のためにもオーガニック栽培を極め続けることを誓ったそうです。
安心安全は当たり前、なおかつ美味しい野菜で人々に感動を与えたい。
その想いを胸に、上村さんは今日も畑へと足を運びます。
上村さんが育てたオクラを調理してみました!
上村さんのオススメは、焼いて塩で食べるという超簡単な食べ方!でも実は、この食べ方は新鮮かつ生でも食べられるくらい甘いオクラだからこそできる贅沢な食べ方なんです。時間の経過したオクラは皮が硬くなり、湯がいて柔らかくしてからでないと、とても食べられません。
シンプルが一番美味しいなんて、単純に野菜そのものが美味しいってことですよね〜!
もう一品はオクラの肉巻き♪これはご飯が進む進む!!子供たちも一気にペロリな夕食になりました◎
いかがでしたか?
かみむら農園の野菜は、流通を通じて全国各所に卸されています。実はみなさんの街でも食べることができるかもしれないので、是非生産者さんをチェックしてみてくださいね♪
<かみむら農園 >
京都府八幡市内里池ノ上
TEL:090-7361-4581
★情報はコチラのfacebookをご確認ください。
https://www.facebook.com/kamimuranouen/
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