新年に欠かすことのできないお料理と言えば、「お雑煮」ですよね。
地域によって具材や味付け、お餅の形に違いがあるので、それぞれの家庭の味が楽しめる料理でもあります。
そんなお雑煮の、味の決め手となるのが「お出汁」。
お雑煮に限らず、和食の基本は出汁にあると言われるほど重要で料理の味を左右するもの。とはいえ、自分で出汁をとるのは面倒だし難しそうだからと言って顆粒だしを使っているご家庭も多いかと思いますが、やはり鰹節や昆布を使って丁寧にとったお出汁は体に優しく、絶品です!
今回は、無添加お出汁で有名な「うね乃」さんにお邪魔して簡単にとれるお出汁の取り方や、お出汁のいろはを教えていただきましたので、みなさんにもご紹介したいと思います。
京都市南区に本社を構える「うね乃」は、もともと滋賀県でお米の庄屋を営んでいましたが、明治36年、鰹節や昆布を取り扱う商売をスタートさせます。現社長の采野 元英(もとふさ)さんは4代目。今回は、副社長でおられる奥様の佳子(よしこ)さんにお話を伺いました。
写真左が佳子さん。お店のスタッフさんとの仲の良さが伺える、明るい雰囲気の店内でした。
第一生産者を大切に。
うね乃では、すべて国産の原材料を使用しています。品質を保つため、という理由も当然ですが、もうひとつ日本産にこだわる理由があります。それが、文化の継承。
お出汁は日本の食文化を支える重要な存在です。しかし、お出汁を作るのに必要なカツオや昆布が手に入らなくなってしまうと、お出汁の文化を未来につなぐこともできません。
元英さんが社長に就任したころ、原材料の産地は深刻な問題に悩まされていたと言います。外食産業の発展に伴う価格競争に巻き込まれ、コストダウンのしわ寄せは末端である産地に及んでいました。利益を出せないまま商売を続けなければならない状況に夢はなく、後継者も途絶えているところがたくさんありました。
「産地を潰してはいけない!」
うね乃は、日本産のカツオや昆布を使った体に優しくて美味しいお出汁を広めることが、産地を守ることにつながると信じてお出汁の素晴らしさを伝え続けているのです。
「でしゃばらない」お出汁。
煮だすだけで簡単に美味しい出汁がとれるだしパック。今では当たり前に売られていますが、実はうね乃では40年以上前から販売しています。発売当初は、今よりも化学調味料を使った顆粒だしが主流の時代。売りに出ても全く相手にされませんでした。化学調味料を使ったお出汁は、本物のお出汁以上に出汁の味が強く感じます。そのため、主観的に「美味しい」と感じやすいのです。
うね乃が目指すのは、「でしゃばらない」味。あくまでも主役は食材なので、お出汁が食材以上の味をだしてはいけないと考えています。大根を炊けば大根の甘みを感じ、ゴボウを炊けばその香りをまず味わう。素材の味を引き立たせ、生かせしてさらに美味しくするのがお出汁の役割りなのです。
化学調味料を使ったお出汁のほうが簡単に「お出汁の味」を出すことができますが、それでは食材の味を楽しむ日本ならではの食文化を支えるお出汁の魅力は伝わらない!熱意をもって売り続けた結果、口コミによってファンが拡大し、今の「お出汁と言えばうね乃」という地位を確立していくのでした。
「無添加」だけど無添加じゃない?
だしパックを買う際、よく目にする「無添加」表示。誤解している方も多いかと思うのですが、「無添加」と書かれているからといって、「素材以外何も入っていない」という意味ではないことをご存じですか?
よくあるのが「酵母エキス」「蛋白加水分解物」といったもの。実は、これらはうま味を出すために人工的に作られた調味料で、スナック菓子やカップラーメンにも使われているもの。法律上は「食品」扱いとなっているため、これらが含まれていても「無添加」と表示することができるのです。また、一言で「無添加」といっても「着色料・保存料無添加」や「調味料無添加」等、何が無添加なのかによって意味は違ってきます。
佳子さんは、「”ほんまもん”を提供し続けたい」と言います。日本の漁港で獲れたカツオや昆布からとれた”ほんまもん”のお出汁。多くの料理店がうね乃のお出汁を取り入れておられるのも納得です。
うね乃のお出汁には、もちろん素材以外のものは入っていません。見極めるポイントは、原材料表示をきちんと確認すること。「昆布」「鰹節」「醤油」等、聞きなれたもの以外が書いてある場合は要注意なんです。
HACCP認定の木造工場。
うね乃本店には、商品加工工場が併設されています。
「木組み」と呼ばれる、クギを一切使わずに木材だけで建物を建てるという日本の伝統技術を駆使して建てられた工場はHACCP(ハサップ)認定も受けています。
※HACCPとは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の略語で、食品の安全を確保するための衛生管理手法のこと。平たくいうと、食の安全を確保できていると認められたところのみ認定を受けることができます。
耐震や消防法等をクリアしようと思うと、木造で認定を受けるのは至難の業だったとか。HACCP対応工場に詳しい方々からは、都心で木造は無茶なので郊外での鉄筋工場を進められたそう。しかし、工場で働くメンバーのモチベーションを考えると本社隣接は譲れない。なおかつ、「”ほんまもん”のお出汁」「文化の継承」を謳っていながら工場がそれにそぐわないものであっては筋が通らない、ということで一丸となって木造建築の工場を完成させたそうです。
”ほんまもん”へのこだわりは商品のみならずというわけですから、さすがの一言です…!
工場の入り口には、建築に関わった人々全員の名前が刻まれた木材が飾られています。
吹き抜けの階段には光が差し込み、木の香りと鰹節の匂いがふわりと香り、とってもいい気持ちになります。
こちらの階段も、クギを使うことなく切り込みだけで作られているのですから、驚きです。
うね乃では、「鳥羽式」と呼ばれる古くから使われているかつお節削り器を使用しています。全自動のものより技術が必要なうえに手間がかかるので効率は落ちるそうですが、味は格段に美味しくなるのだとか。
12枚の鉄の刃金を0.1ミリ単位で均一に取り付けて使用するのですが、取りつけるだけでも難しく、使いこなせるまで10年はかかります。
鉄の刃金とセラミックの刃では、切り口の断面が違ってきます。程よい凸凹感のでる鉄の刃金のほうが、出汁の味がよく出るとのこと。鉄の刃は、職人さんが毎日砥石で丁寧に砥ぎます。
削りたての鰹節をいただきました!鮮やかな香りが際立っていて最高に美味しかったです。
蒸し器も、昔ながらのセイロを使用。
実は簡単!たった5分で美味しいお出汁がとれちゃいます。
お待ちかねのだしの取り方を教えていただきましたが、「えっ?!それだけ?!」というくらい簡単でした。
佳子さんいわく、「お出汁に正解はない」。濃い味が好きな人は味の濃い昆布を選んだり塩加減を調整すればいいし、ぐつぐつ煮込んだアクの強いお出汁が好きな人もいる。
「こうあらねば!」と考えてしまうことなく、自分に合った味を大切に、料理を楽しんでほしい。
昆布は水に8時間ほどつけておき、60℃になるまで温めます。水泡がふつふつと上がってきたら60℃の合図。
60℃になったら鰹節を入れて出来上がり!簡単すぎてビックリですよね?!時間にして5分ほどです。
このままだと味が薄く感じる人は少し塩を足してもOKです。
夜のうちに、お鍋に水をはって昆布を入れておけば、朝簡単にお出汁をとることが可能なんです♪
いかがでしたか?
今年のお雑煮は、お出汁をとるところから始めてみませんか?優しい味でスタートする新年というのも、いいものかもしれませんよ。
うね乃では工場見学やお出汁の飲み比べ、離乳食作りのワークショップなども開催されていますので、是非ホームページをチェックしてみてくださいね!もちろん、だしパック等の全国配送も可能です◎
<うね乃本店>
〒601-8461
京都市南区唐橋門脇町4-3
TEL:075-671-2121
【営業時間】
定休日:第2土曜・日曜・祝祭日休み
https://odashi.com/
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