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紙の本が日々の暮らしを豊かにしてくれる。

暮らしにおけるデジタル化が進み、近年では電子書籍によって読書を楽しむ方も増えているのではないでしょうか。
一方で、本の匂いや紙の感覚が好きだったり、集中して読めることや特定のページだけ開いてペラペラと飛ばし読みするのに便利なことから、紙の本の根強いファンも数多くいらっしゃいます。

今回は、そんな”本”にまつわるお話。
株式会社大垣書店の大垣守可さんに紙の本の魅力や本への想いをお伺いしてきましたので、是非ご覧ください。

西陣文化の発信地:堀川商店街。











取材のためお邪魔したのは、「本がつくれる本屋」をコンセプトに2019年オープンした「Horikawa ac lab」。京都・堀川商店街にあったこちらのお店は、今年の9月頃にオープン予定である「堀川新文化ビルヂング」のプレ事業としてスタートし、先日の26日にその役目を終えて閉店いたしました。

約70年に渡って京都を中心に本屋を営んできた大垣書店が「堀川新文化ビルヂング」の運営を行うことになったきっかけは、京都府が堀川団地においてアートやクラフト、交流、地域活性化などをテーマとした文化施設を建設するにあたり、委託事業先を公募していたことでした。西陣織等を始めとする西陣文化の発信地として、堀川商店街が選ばれたのです。

書店業界は、変化する業界の中で自分たちの存在意義や価値の再確認を行うフェーズに入っています。どんどん世の中が便利になりデジタル化が進む中でも、紙の本だからこそできることや、人に与えられることはたくさんあるはず。それは何か?を追及するために、大垣書店は新たな取り組みとして公募に名乗りをあげました。



お話をきかせてくださったのは、「堀川新文化ビルヂング」開設準備室室長の大垣守可さん。
紙の本の素晴らしさを、少しでも多くの方に伝えていきたいと語ります。

「Horikawa ac lab」でチャレンジしてきたこと。







印刷会社である「修美社」と一緒に運営をスタートした「Horikawa ac lab」では、本を買うだけではなく、自分だけの本やノートなどを1冊からでも作ることや、活版印刷機を使って自分自身でオリジナルの名刺やショップカードを印刷できるサービスを提供してきました。

自分の本を出版したいと思っても、出版社を通して行う商業出版だとそもそも出版社に採用されることからしてハードルが高い。自費出版で小ロットの本が自分で作れるなら、もっと本の出版に前向きになれる人も増えるのではないか。
自分で小説を書いたり写真を撮影する人にとって、本や写真集の出版は夢。そんな夢をもっと気軽に叶えられる状況を作ることによって、新たな一歩を踏み出す人が増えたり、紙や印刷に対して関心を深めることにつながれば、と考えたのです。

紙の本がなくなる日がくる!?



電子書籍化の浸透により、以前に比べて紙の本を購入される方は減少傾向にあります。商店街にあった小さな本屋さんが閉店していく様も見てきた大垣さん。

「紙の本がなくなる日が、いつかくるのだろうか?」
その問いに自問自答した結果、辿り着いたひとつの結論。
紙の本がある暮らしは、人々の生活を豊かにしてくれるはず。ということ。

綺麗に本が並べられた本棚のある家と、本が全くない家だったらどちらに住みたいか?
紙の質感や装丁を楽しんだり、匂いや手触りなど五感でも楽しめたり、何度も読み返すことで手に馴染み愛着が湧いたり…内容だけではない楽しみが日々の暮らしに安らぎや温かみを与えてくれることはないか?

そんなささいなことが、日々の暮らしを少しだけ豊かにするエッセンスになるはず。
大垣さんは紙の本が秘めた可能性はまだまだたくさんあり、その魅力を知ってもらうことで、「やはり紙の本は必要だ」と、多くの人が感じてもらえる状況を作ることができる!と確信するに至りました。



活版印刷とは、凸の文字版(活字)を並べ、圧をかけることによって紙にインクを転写する印刷方法です。
こちらはその活字たち。まさに圧巻の光景!ここから必要な活字を取り出し、好きな用紙に印刷することができます。



活字は、このようにピンセットを使って機械に埋め込んでいきます。







活字ができたら、機械にセットしてプレス!



オリジナルの版を作り、いろいろなものに転写することも可能です。



「Horikawa ac lab」は、紙や印刷にまつわることの「駆け込み寺」的存在でした。
「こんなことしたいけどできますか?」「こんな本が作りたいんだけど…」漠然とした悩みや疑問・相談にも丁寧に応えてやりたいことの実現に向けて伴走し、撮りためた子供の写真を写真集にしたい、とか、授業のノートを本にしたい、とか。これまでも様々な要望に応えてきました。
できることが増えていくことで紙や印刷、本への興味を増してもらいたい、という想いから小さな声にも耳を傾けられる存在を目指してきたのです。
この役割や精神は「堀川新文化ビルヂング」にも受け継がれ、紙や印刷にまつわること全般に寄り添える場所を目指します。

新しい発見に出会える場所。



新たに建設中の「堀川新文化ビルヂング」では、大垣書店やカフェ&バーに加えて、地域の人たちと一緒に楽しめる催事やワークショップスペース等の設置が予定されています。「Horikawa ac lab」では、プレ事業として様々な取り組みにチャレンジしてきました。「堀川新文化ビルヂング」では、その集大成が提案できるよう、今よりも幅広い印刷物に対応できる施設になる予定なのだとか。

お家で過ごす時間が増えた方も多い今、この場所を起点として新しい発見やおもしろいものに出会える空間にしていきたい。そう大垣さんは語ります。
紙の本の魅力をより多くの方に知ってもらうため、大垣書店はこれからも新たな歩みを続けていくことでしょう。



いかがでしたか?
紙の本がなくてもいいのか?読めれば何でもいいのか?の問いは、私たちインテリア業界とも通じるものがあると感じました。座れればどんな椅子でもいいのか?と言われると、決してそうじゃない。お気に入りの椅子に座って過ごす時間が日々の暮らしに豊かな時間を与えてくれます。全部が全部こだわりのもので揃えることは難しくても、ここだけは!という場所にこだわりをもつことは大切だと思います。

私にも好きな本があります。気になったページには付箋が貼ってあったり、何度も読み返した分手垢もついて少しくたっとなってますが、それも愛着。一緒に過ごした時間の経過と愛着を感じられるのもまた、紙の本の魅力なのではないでしょうか。

<堀川新文化ビルヂング>
〒602-8242
京都府京都市上京区皀莢町287(堀川商店街 北側)
※2021年9月頃オープン予定

https://horikawa-shinbunkabldg.jp/#concept-area


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