今回のキラリオマガジンでは、京都にある珍しい本屋さんをご紹介したいと思います。
本屋は本屋でも、ただの本屋ではありません。その名も、「只本屋(ただほんや)」。
全国各地のフリーペーパーのみを扱うお店です。
フリーペーパーと言えば無料で配布されるローカル情報誌ですが、それを専門的に取り扱うお店とは、いったいどういうお店なのでしょうか?!代表の山田毅さんにお話をお伺いしてきましたので、是非ご覧ください。
ゲストハウスの一角にあるフリーペーパー専門店
只本屋は京都・東山五条にあるフリーペーパー専門店で、ゲストハウス「常松庵」の使っていなかった一角を借りて毎月末の土日だけオープンしています。
今年で6周年を迎える只本屋は、関西でフリーペーパーを作っていた学生が関西でフリーペーパーを盛り上げるべく代表の山田毅(つよし)さんに相談したことをきっかけに、2017年発足しました。
当時の発足メンバーは、山田さんを除く学生5名。一過性のイベントのような活動にするのではなく、定期的に開催できるようお店を構えるカタチをとり、店番や運営は空いているメンバーが交代で担当するスタイルでスタートしました。
山田さんは元々東京の会社に勤務し、フリーペーパーの発行等も行っていましたが震災を機に京都に移住。
東京が活動の中心となっているフリーペーパー団体の中で、関西でも何かしたいという学生の想いに触れ、只本屋の代表を務めることになりました。
店内に並ぶフリーペーパーは約300種類ほど。「京都にフリーペーパー専門店がある」という情報をSNS等で聞きつけた日本全国のフリーペーパー発行企業や団体から連絡があり送られてくるものや、運営メンバーが見つけてきて取り寄せるものまで、多種多様なフリーペーパーがところ狭しと陳列されています。
店名の「只本屋」は、「無料の本屋」という意味はもちろんとして、今は「フリーペーパーだけを扱う珍しい本屋」という認識を、いつか「ただの本屋(=何でもないごく普通の本屋)」と言われるくらい、フリーペーパーの立ち位置を変えていけたらいいな、という想いも込められています。
一期一会を楽しむフリーペーパーの魅力。
只本屋を訪れた方は8冊まではフリーで、紙袋を500円で購入すれば9冊目以降何冊でも自由に持ち帰ることができます。
フリーペーパーの魅力は、何といってもその土地土地のローカル情報や地元の人だけしか知り得ないような情報を得られるところにありますが、それだけにはとどまらないと、山田さんは言います。
フリーペーパーは一般には流通していないものがほとんどですので、偶然の出会いを楽しむことができます。近年ではネット検索すればあらゆる情報が手に入りますし、欲しい本があればアマゾンですぐに購入することが可能です。しかし、フリーペーパーはいつもの街でふと見つけたり、知らない街を旅行していて偶然手にするという一期一会の縁があるのです。
実際に只本屋を訪れる方々も、近所に住む方もいれば海外のアートブックフェアに招待されたこともあることから海外から足を運ぶ方、デザイン関係の方が資料集めのために訪れたりと様々。みなさん「ここにしかない何か」を求めて、その日たまたまお店に並んでいた、どこかの街のフリーペーパーとの偶然の出会いを楽しんでいます。
コミュニティスペースとしての位置づけ。
只本屋の根幹には、コミュニティスペースとしての位置づけがあります。
発足メンバー6人は、現在全員社会人になっており他府県で暮らすメンバーも多いですが、今でも在籍メンバーとしてそれぞれの地域で只本屋の運営を手伝ったり、京都に帰ってきた際に実家に帰ってきた子どもたちやサークルのOB・OGのような感覚で只本屋を訪れ、手伝ったりもします。
今では只本屋に関わりたい有志メンバーが20人ほど在籍していますが、全員が生業は別に持ち、趣味に時間を使うようにやりたい時にやれる人が運営するスタイルを維持しています。
フリーペーパーを販売して事業として成り立たせている企業もありますが、只本屋はその形式をとらないと決めています。それは、「お金を稼ぐ」という利害が発生した時点で「実家に帰ってきた子どもたち」や「サークルのOB・OG」といった関係性が崩れてしまうからでもあります。
あくまでもコミュニティスペースとしての存在意義を、それだけ大切に想っているのです。
あえて展望や野望はもたない。
山田さんに今後の展望をお伺いしたところ、「あえて持たないようにしています。」とのこと。
震災を経験した山田さんは「長く続ける」ということがどれだけ難しく、どれだけ大切かを身をもって痛感しました。
その時感じたことが、石のように硬く強いモノよりも、柳のように柔らかくしなやかなモノの方が環境に対応し、長く在り続けることができるんだ、ということ。
只本屋も、「こうあらねば!」とか「こうするべきだ!」とガチガチに固めてしまうと状況に対応できなくなる可能性があります。生活の中にゆるやかに存在し続け、馴染みながら長くそこにある存在であれるよう、展望や野望はもたないよう意識されているのです。
とは言え、やりたいことや新しいことへのチャレンジ精神は常に持ち続けています。
今も、「只本屋をあなたの街に作りませんか?」PJTを始動させています。これは、通称「只棚」と呼ばれている只本屋の店内と同じような本棚を、いろいろな街の公共施設に設置してもらおう!というもの。
病院や塾、市役所、銭湯等すでに設置の話が進んでいる案件もいくつかあります。
ゆるやかに、しなやかに、そして強く、これからも只本屋は様々な街に在り続けることでしょう。
いかがでしたか?
フリーペーパーに興味が湧いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。あなたの街にも、きっとたくさんのフリーペーパーがあると思いますので、是非手に取ってみてくださいね♪
<只本屋 京都本店>
〒605-0871
京都府京都市東山区慈法院庵町594-1
【営業時間】
13:00~18:00
営業日:毎月末土日
▶HP
https://tadahon-ya.com/
▶facebook
https://www.facebook.com/tadahon.ya/
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