子供の誕生や七五三、入園・入学、成人などなど…人生や家族の節目に「記念写真」を撮影するご家庭は多いのではないでしょうか。
京都・伏見にも、そんな「記念写真」を大切に想い、人々を笑顔にしてきた場所があります。
「伏見の写真館 これから」は、伏見に住む人たちの人生における様々なワンシーンに寄り添いながら、町や暮らし、人々や家族の歩みを見守ってきた写真館です。「ハレの日」だけに限らず、何気ない日常や家族の風景、伏見の景色をカメラに収めてきた館主の中田 絢子(じゅんこ)さんにお話を伺ってきましたので、是非ご覧ください。
描きたかった情景が、写真なら撮れる。
「伏見の写真館 これから」は、「京都伏見を えこひいきする まちの写真館」をコンセプトに2017年12月にスタートしました。藤森神社の北にある自宅の土間を撮影スタジオとして兼用しながら、予約の入った時だけオープンするスタイルです。
館主でありフォトグラファーの中田 絢子さんは、高知のご出身。
元々は絵を描くのが好きで中学・高校時代は美術部に所属していましたが、なかなか絵の腕が上達せず、それをごまかすように抽象画ばかりを描いていたと言います。
きっかけとなったのは、写真部に所属する友達の作品でした。
写真といえばカメラに向かってのピースサインが定番だと思っていた中田さんは、その美しい情景写真の作品を見て衝撃を受けたのです。「自分が描きたかった世界がここにある!」そう感じた中田さん。絵での描写には自信がなかったが、写真であれば写し出すだけだから簡単にできるかもしれない…と考えるようになります。
これをきっかけに写真に目覚め、進学が決まっていた美術系の大学で写真に関する授業をすべて選択し、技術を磨いていくのでした。
写真館の役割りとは。
写真の道を志すようになった中田さんですが、卒業後はなかなかいいと思える就職先に出会えず、一旦は映画館での仕事に就きます。趣味で写真の技術を磨こうと思っていたものの、仕事が忙しくなるとまったくカメラに触らない日々が続くようになりました。
このままでは写真の世界から遠ざかってしまうかもしれない…危機感を覚えていた頃、成人式の写真を撮影してもらった地元の写真館でカメラマンの募集をしていることを知り、すぐに応募し、働くこととなったのです。
カメラマンの仕事と言えば、初めはアシスタントとしてベテランカメラマンの雑用をこなしたり、カメラに触らせてもらえないような修行の日々を想像していましたが、写真館での仕事はまったく違うものだったと言います。
その当時の恩師であり写真館の社長から教わった言葉。それは、「まちの写真館は、ただ依頼されて撮るだけが仕事ではない。まちの人たちの成長や変化を記録することで、この土地の歴史を残す役割もあるんだよ」というもの。
実際その写真館では、家族の節目になるたびに依頼が入り、子どもの成長や歴史を何十年も見守ってきた家族が何家族もいましたし、写真館の保存フィルムには何年もかけてまちが変っていく様やある日のワンシーンがたくさん残されていました。
写真の意味、写真館の役割に魅せられていった中田さん。自身のフォトグラファーとしての存在意義も、この頃から意識するようになっていきます。
まちや人の記録を受け継いでいきたい。
旦那さんの転職を機に京都・伏見に引っ越してきた中田さんですが、初めは独立はいつかの夢でしかなく、またどこかの写真館で働こうかと考えていました。
そんな時、近所にあった古い写真館が閉館していることに気づきます。
「写真館は、人や家族、まちや土地の歴史を残すもの」
恩師の言葉を思い出した中田さんは、伏見のまちや人の歴史を受け継いでいく役割が途絶えてしまうのでは…?!と危機感を覚えます。閉館した写真館を訪ねて自分に引き継がせてもらえないか、と掛け合いますが叶わず。自分で何とかするしかないと思っていた時、ふとマイホームの設計をお願いしていた建築士の方に「自宅で写真館ができたら…」という夢を口にします。だったら、と自宅の建築プランに撮影スタジオのスペースを設ける構想が生まれ、マイホーム建築と同時に写真館をオープンさせることとなったのです。
こちらは、記念日に限らず定期的に家族写真を撮影されているご家族。見慣れた人に撮ってもらっているせいか、お子様の笑顔やおどけた顔も、とっても自然!
中田さん曰く、家族のハレの日にはなぜかいつもいる「親戚のような存在」が理想。急に知らない人が来て写真を撮っていたら緊張していつもの表情が撮れないが、慣れた人が来ると、みんなついついいつもの表情がこぼれ、とっても素敵な写真が撮れるのだとか。
ホームページでも「京都伏見を えこひいきする まちの写真館」と謳っているのは、伏見のまちや人の歴史を残していきたい想いの前提に、中田さん自身が伏見という土地が大好きだから、という根底があります。伏見稲荷や藤森神社等緑溢れるスポットも多く、大手筋~中書島にかけての桜通りも有名です。
スタジオが小さい分、中田さん自慢のロケーションを紹介し、まちに出て撮影することも多々あるのだとか。
伏見をぶらぶらしながら撮影スポットを探すのも、日々の楽しみのひとつだそうです。
目指すのは、「かかりつけのお医者さん」。
中田さんにとって、忘れられないお客様がいらっしゃいます。それは、定期的に開催している写真展に訪れて下さった女性でした。その女性は実は重い病気を抱えておられ、自分が将来的に結婚したり子どもを授かることは難しいと悟っていました。
「家族写真は撮れないけれど、自分が生きた証や今の自分を残しておきたいんですが、そんな写真も撮ってもらえるのでしょうか?」
「撮影スタジオ」というと、記念写真や家族写真が当たり前で個人の写真を残す、というイメージがなかったところ、中田さんが撮影した写真たちを見て「この人なら…」と思ったそうです。
女性との出逢いをきっかけに、自身の目指す姿が「かかりつけのお医者さん」だと認識するようになった中田さん。
何か気になることがあったり、具合が悪くなるとまず駆けつける場所。とりあえずそこに行けば今までの状態もわかってくれているし、これまでの症状も理解してくれているから安心、という存在です。写真のことで気になることがあれば、とりあえず「伏見の写真館 これから」に行ってみようと思ってもらえる存在になりたい。そう中田さんは言います。
中田さんの写真から感じるのは、”素”の人やまち。
きっと、伏見に住む人や伏見という土地を心から愛している中田さんだからこそ、その日常に溢れる表情や空気感を写真に捉えることができるのでしょうね。
いかがでしたか?
あなたのまちにもきっとある小さな写真館で、自分や家族の記録を残していくのも素敵かもしれませんね。
<伏見の写真館 これから>
〒612-0863
京都府京都市伏見区深草藤森町 藤森神社 北
※完全予約制
営業日時 / 応相談
▶HP
https://nakatajunko.com
▶facebook
https://www.facebook.com/photo.korekara/
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