爽やかな風が心地よい、秋らしい季節になりました。
本格的なアウトドアシーズンの到来を前に、先日、屋外で抹茶を楽しむ「野点(のだて)」に挑戦してきました。
今回は、野点の考え方や具体的な方法、そして野点を通して見つけたいくつかの発見を綴っていきます。
野点の経験がある方も、初めて聞いたという方も、一緒にピクニックをしている気分でお読みいただけると嬉しいです。
野点とは
野点(のだて)とは、自然の中で自由に抹茶を楽しむことです。
私が野点を知ったのは、約1年前、ふと立ち寄ったアウトドアショップで「野点セット」を見つけたことがきっかけでした。
コンパクトな巾着の中に、茶碗や茶筅などの抹茶を点てるための道具が入っていて、「アウトドアで抹茶を楽しんでみませんか?」と書かれたPOPが添えてあったのです。
いつか茶道を習ってみたいという憧れを持ちつつ、足を踏み出せずにいた私。元々アウトドアが好きなこともあり、「これなら私にもできそう!」とピンときました。
必要なものを茶籠につめて
野点に必要なものは、茶碗、茶筅、茶杓、抹茶、お湯、敷物、布巾、お茶菓子です。
お茶の道具は、「日本の伝統を身近に」をコンセプトにした京都の日本茶専門店「YUGEN」で販売している「BREWING KIT」(¥10,900)を購入しました。茶碗・茶筅・茶杓・抹茶が揃ったキットなので、お茶の道具を一から揃える方におすすめです。
茶碗は、江戸時代から陶芸が盛んな栃木県 益子の作家・佐藤敬さん作。一つ一つ手作業で制作されたこの茶碗は、大きすぎず、重すぎず、ほどよく手の中に収まる丁度よさです。
茶筅と茶杓は、室町時代から続く伝統工芸品で奈良県 高山で作られたもの。それぞれ丁寧な手仕事によってつくられたことがよく分かります。
熱湯を入れた水筒も持参します。よりアウトドアな雰囲気を楽しみたい方は、バーナーと小さなヤカンを持っていくのもおすすめ!これらの必要な道具を竹籠に入れたら準備完了です。
いざ野点
向かったのは近所の公園。木漏れ日の下、気持ちよく過ごせそうな場所を見つけたら、敷物を敷いて、自分だけの野点空間をつくっていきます。
まずは茶碗に少しのお湯を注ぎ、茶筅でお湯を混ぜるようにして茶碗と茶筅を温めます。
お湯を捨て茶碗を拭いたら、茶杓に山盛り二杯分の抹茶をとり、茶碗の中へ。お湯を注ぎ、抹茶を点てていきます。
お点前は、幼い頃祖母に教わったおぼろげな記憶を辿りながら再現しました。当時はおままごとのようにやっていたので、正式な作法とは全くの別物だと思います。
茶室で行うお茶会ではご法度でしょうが、野点ではそれも良しとしてくれます。その懐の深さとカジュアルさが、今の私にはとても心地よく感じました。
お茶菓子は、自宅にあったビスケットを持参しました。甘いビスケットと、ほろ苦い抹茶が良く合います。
周りに広がる自然の風景や、小川のせせらぎ、子ども達が遊ぶ元気な声を聞きながら、ほっとひと息つく瞬間です。
茶室でのお茶会なら、季節を感じる花を生けたり、掛け軸を飾ったりしますよね。野点では、周りにある自然から、季節をダイナミックに感じることができます。これも野点の大きな魅力ではないでしょうか。
ゼロウェイストの気持ち良さ
野点のもうひとつの良さは、ゴミが出ないことです。使い終わった茶碗や茶杓、茶筅は、お湯でさらりと流し、布巾で軽く拭いておくだけで十分です。珈琲の場合は、フィルターや珈琲カスのゴミが出てしまいますが、抹茶では完全にゼロウェイストが叶います。
美しい自然を見ながら楽しむからこそ、その自然を汚したくない。ゴミが出ないというのは、本当に気持ちがいいものです。
アウトドアシーズン到来!秋の野点、おすすめです。
野点をして感じたことは、少しのアイデアで、日常を豊かにできるということです。
公園も、抹茶も、私にとっては日常のひとつ。
それぞれは特別なことではなくても、それらを掛け合わせることで、魅力を再発見できることや、新しい楽しさが生まれることを、改めて実感しました。
これから本格的なアウトドアシーズンが始まります。ピクニックやハイキングに行く荷物の中に、野点セットを加えてみませんか?少しの工夫でいつもの場所が特別になる小さな魔法と、自然の中で抹茶を楽しむひとときを、ぜひ体験してみてくださいね。