幸せなときもあれば、落ち込んだり、迷ったり、さまざまな感情を抱えながら営む日々の暮らし。ひとつひとつの感情と向き合ってあげたいけれど、目の前のタスクを消化することに必死で、自分のことは後回し……。気づけば涙がポロポロ溢れ、自分を労わる時間が足りなかったこと、その大切さに気づかされることもしばしばです。
振り返ってみると、心に余裕がなくなった時、いつも同じ場所を訪れていることに気づきました。
「定番だからこその安心感が、心に余白をつくってくれる」
そんな最近の気づきと共に、私が暮らす京都の街なかにある、“いつもの”場所をご紹介します。
全てを包み込むような、懐深い京都のお寺
お寺の魅力にはじめて触れたのは、小学6年生の京都修学旅行でした。班のメンバーで決めた行き先は、京都の北西部にある禅寺・龍安寺。素足で木の床を踏みしめて歩く気持ち良さや、作意は不明と言われる石庭の美しさに、子供なりに感激したことを覚えています。
あれから20年。京都のお寺は、どんな心も受け入れてくれる懐の深さで、変わらずそこにあります。
この写真は、今年の夏、心も身体も疲れていた時にふらりと訪れた、京都北西部にある蓮華寺です。
誰もいない方丈に腰かけると、ひんやり澄んだ空気を感じます。池を悠々と泳ぐ鯉の姿。水面が反射して、ゆらゆら光がゆれる天井。目を閉じて虫や鳥の声に耳を澄ませることで、どんどん頭の中が軽くなっていく感覚になりました。
小学生から30代へ。年齢を重ねて、状況も、考えも、悩みも変わったはずなのに、お寺で癒された感覚は変わりませんでした。その絶対的な安心感がある限り、これからも健やかな心を保ちながら過ごしていけるのだろうと思います。
心落ち着く、自分のスタンダード。“いつもの”が詰まった喫茶店
京都は喫茶店の街でもあります。新しいお店を開拓するのも楽しいけれど、落ち着きたい時に向かうのは、いつものお店。国際会館駅から徒歩約5分、ドイツの別荘をイメージしてつくられた「ドルフ」もそのひとつです。
いつも座る窓際の席。焼きたてのスコーンと珈琲もいつものオーダーです。スコーンにホイップクリームとジャムを付けてサクッと頬張ると、口いっぱいに優しい甘さが広がります。これこれ。色あせない、この味。
大きな窓から眺めるのは、樹齢280年の立派なケヤキの木。そこから差し込む木漏れ日を眺めていると、心も身体もリラックスしてくるのを感じます。
いつもの席で、いつものメニュー。「いつもの」と注文できるほどの常連ではないけれど、その距離感がまた心地よいのかもしれません。
五感が研ぎ澄まされる、自然の中へ
京都は自然豊かな街です。
京都の風物詩である鴨川。その奥に山々が連なり、広い空へと続いていきます。川のせせらぎを聞きながら散歩すると、川の流れに乗って心が浄化されていくような気持ちに。
大きな荷物を背負って、意気込んで探検しようとしなくても大丈夫。いっそのこと、スマホすら持たず、身ひとつでふらっと訪れるのが良いかもしれません。いつも訪れる公園でも、五感が研ぎ澄ますことでより一層美しく感じられるもの。
少しの散歩で、頭の中の霧が晴れて、帰宅する頃にはすっきり!ほどよい足の疲れさえも心地よく感じる、とっておきの場所です。
お気に入りの場所に、心をあずけて
疲れたときも、健やかなときも、迷ったときも、悲しいときも、いつも変わらない佇まいでそこにある。その安心感に心をあずけることで余白が生まれ、また明日からも頑張ろうと思えるのかもしれません。
人と人とが助け合いながら生きていくように、街で暮らし、街に助けてもらいながら、ほがらかな暮らしを営んでいきたいです。
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