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ホッと心穏やかに。

風呂敷のある暮らし。

“風呂敷(ふろしき)”のイメージって昔ながらの“モノ”を包む布。
包むイメージが強い風呂敷ですが、包む以外にもたくさんの使い方があり、デザインもおしゃれなものがたくさん。

今回ご紹介するのは、創業82年。
ふろしき専業メーカーでありながら、風呂敷の普及や日本文化の継承にも精力的に取り組んでおられる山田繊維株式会社様。
直営店舗である「むす美 京都」店様にお邪魔をし、広報担当者である山田悦子様にお話をお伺いしてきました。
ふろしきの種類から使い方に至るまで、その魅力を2回に渡ってお伝えしていきたいと思います。

風呂敷
「むす美 京都店」は、三条堺町を西に入ったイノダコーヒさんの西隣にございます。
風呂敷
店内には、色とりどりのカラフルな風呂敷が多数ディスプレイされています。
風呂敷


「むす美 京都」は、三条堺町を西に入ったイノダコーヒさんの西隣にあるお店です。
お店入り口のウィンドウには、カラフルで素敵な模様の風呂敷が目を引きます。
一見、それが風呂敷とはわからない佇まいです。
店内に入ると、そこはまるでアートギャラリーのよう。
壁一面に風呂敷が展示されているのですが、古典的な和柄や浮世絵からデザイナーとコラボレーションしたモダンな模様まで、多種多様な風呂敷がディスプレイされています。
天井からも可愛らしいアートの風呂敷が吊るされており、見ているだけでワクワクしてきちゃいます!

風呂敷


かつて日本中の誰もが使っていた「風呂敷」。
ですが、生活スタイルが変化し、代わりとなる紙袋やビニール袋が一般的となったことでその活躍の場は狭まり、普段の生活で使われることは少なくなりました。
しかし、風呂敷には先人たちの知恵や心が詰まっています。
古いと思われがちな風呂敷ですが、決して過去の物ではなく、現代のライフスタイルにもいきいきと柔軟に適応し、私たちの心に潤いを与えてくれるアイテムなのです。

包んでいる写真


「包む」
風呂敷には、「包む」「結ぶ」「運ぶ」という、3つの代表的な役割があります。
その1つ目である、「包む」。
「包」という字は、「お腹の中に子を身ごもっている、母体の中で用水に優しく包まれた子と母が一体になっている姿」から来ています。
「包む」という言葉には、包まれた中身を大切に扱う、守るという意味も込められています。
ふろしきの役割を果たす方形の布の歴史を紐解くと奈良時代にまで遡りますが、「風呂敷」という名前が広く定着したのは江戸時代中期と言われています。
それまでは「つつみ」「ころもつつみ」「ひらつつみ」などと名称を変えながら呼ばれてきました。
風呂はもともと蒸し風呂のことを指し、風呂に行く際の衣類を結んで運び脱衣所に敷いて身繕いをしたという説や、高貴な人が入浴するとき風呂釜の底に直接足が触れるのは恐れ多いと底に布を敷いたなど諸説あります。
ふろしきは、衣服を包み運ぶ機能だけではなく、神聖なものを護るための結界の意味もあったようです。
日本独特の文化として培われてきた「包む」という心。
大切なものを包むときに込める真心、包むという文化を育む精神。
ふろしきは、そんな心や精神の表れでもあるのです。

結んでいる写真

「結ぶ」 紐を結ぶ、髪を結ぶ、努力が実を結ぶ、結びの言葉・・・。
「むすぶ」という動作は、日常生活の中であまりにも深く浸透しており、現代の生活では、この言葉の意味を深く意識することはあまりないかもしれません。
用の面から考えると、「結ぶ」は道具を生み出しました。縄文時代の人々は、石と木を結びつけることで道具を作り出し、そこから狩猟や農耕が発達しました。結ぶという行為は、その後の人類の繁栄に大きく影響しています。
精神面でも「結ぶ」は私たちの心に深く浸透しています。語源を辿ると、結びの語源は「産霊(むすび)」と言われており、「産(むす)」は生命が生まれてくること、「霊(ひ)」は神秘的、霊的な働きを示します。これは、万物を産み成長させる神秘的な力を表しています。
古来の日本では、ものの「結び目」にも神が宿っていると考えられていました。
四角い1枚の布の端を結んで用を為し、結びを解くと再び元のかたちに戻る「ふろしき」という道具。この「むすび」は、「1+1=2」には留まらず、形を変えて、いっそう強いつながりとなります。
人と人の心を結ぶ。
日本人の知恵と文化を世界へと結ぶ。
伝統を現代の生活に根付かせ、未来へ結ぶ。

ふろしきには、そんな大切な役割があるのです。


運んでいる写真

「運ぶ」
ふろしきは、一枚の布を結んだり解いたりすることで、さまざまに形を変え、ものを包んだり運んだりする道具になります。
商人たちが商う品の大きさや形は千差万別。
それに合わせて形が変えられ、売れたら畳んで持ち帰ることができるふろしきは、重宝する道具のひとつでした。
商い物とお金の交換だけではありません。そこには、信用・信頼という心が介在します。ふろしきの所作のひとつが、商売人として価値を表していました。商人たちは、真心や信頼を一枚の布に包み込み、背負って運ぶことで、人と人との縁を結んでいたのです。
また、日本人は「ハレとケ」を気にします。
ハレの日のための品物を運ぶ時、ケガレ(穢れ)が、その品物に途中でついてしまわないように風呂敷に包んで運び、風呂敷をほどく時にはそのケガレごと自分が一身に引き受けて、大事な品物だけを相手にお渡しする。
そうやって、信用・信頼とともに運んだことの証が、風呂敷にはあったのです。

風呂敷
風呂敷


美しい日本の文化
山田様がお客様とお話をした際に、忘れられないエピソードがいくつかあるそうです。
そのひとつが、フランス人のお客様との出会い。
風呂敷を探しに来られたフランス人のお客様に「どうして風呂敷をご存知なんですか?」と尋ねたところ、「飛行機の中で出会った日本人の所作の美しさに魅了されたから」とのこと。
旅行中の飛行機でたまたま隣の席だった日本人女性が、着ていたコートをたたみ、カバンの中から一枚の美しい布を取り出して、そのコートを包んで荷棚に上げたそうです。
その一連の所作が、何とも美しくエレガントだったとか。
後から、その布が風呂敷だと知ったフランス人のお客様は、それ以来風呂敷を集めて愛用されているとのこと。
風呂敷を使っているその所作だけで、日本人の品性が伝わったことに山田様は感動し、嬉しくなったとか。


今回は、風呂敷から学ぶ日本の文化やその意味・背景についてお伝えさせていただきました。
次回は、風呂敷の使い方や包み方など、実用編をお届けしたいと思います。


<むす美 京都店>
〒604-8111 京都市中京区三条通堺町東入桝屋町67
TEL:075-212-7222
FAX:075-212-7223






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〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2丁目31-8
TEL:03-5414-5678
FAX:03-5414-6788


 

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